No.4 胸郭出口症候群の症状と姿勢
胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS) とは、胸郭(肋骨の筒)の出口である鎖骨周囲で、神経、動脈、静脈の圧迫を受けることによって起こる症状の総称のことを言います。
これは、1956年にPeetが提唱したもので、けっこう古くから知られているものとなります。
実際のところ、血管が圧迫されて起こる頻度は少なく、95%が腕神経叢と呼ばれる神経が原因と言われています。
症状は、上肢にしびれや痛みが生じます。人の首の神経の問題は、腕に生じることが身体の特徴です。
元々人間は、魚類からの派生と言われており、魚のヒレの部分が上肢になっていったとされます。
その為、首と腕はつながっているような構造にあり、首の神経は腕の神経を支配するため、首の神経の問題は、腕に生じることになります。
腕神経叢といわれる神経は、脊髄から出て、首から起こる神経の内、第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経からなります。
頚椎は7つありますので、首の下側からででいる神経のこととなります。
その問題となる部位は3つあります。
①前斜角筋と中斜角筋の間(筋肉の間)
②鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙(骨と骨の間)
③小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方(筋肉の下)
(臨床画像 Vol.33, No.3, 2017より引用)
それぞれの部位で絞めつけられたり、圧迫されたりすることで生じる症状となりますが、神経がそのような状態になることを、神経の絞扼と言います。
この神経の絞扼が受ける部位によって、症状の名前が変わり、①斜角筋症候群、②肋鎖症候群、③小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれます。
次に神経の絞扼によって、症状が出やすい場所の内訳について下記に示します。
胸郭出口症候群150例の臨床症状 症例数(%)
頭痛30(20%)
背部痛51(34%)
肩痛135 (90%)
上肢痛57(38%)
しびれ感126 (84%)
上肢40(27%)
手指 98(65%)
手指腫脹9(6%)
この結果からも分かるように、肩痛としびれが最も多い症状ですね。
さらに、神経の絞扼の仕方には、圧迫型と牽引型というものがあります。
圧迫型は男性に多く、平均年齢は35歳、牽引型はほとんど女性であり、平均年齢は26歳と若い方が発症しています。
また混合型が全体の7割を占めるとされ、腕神経叢の牽引による症状が主症状の人が多いとされています。
これらは、姿勢不良によって、後頭部から肩あるいは、背部に痛みを訴える人が多いと言われています。
例えば、いかり肩では、斜角筋の隙間が狭くなるし、なで肩では、肋骨と鎖骨の間が狭くなります。
またその状態を続けていると、肩甲骨が下方回旋位(下に傾く)になり、小胸筋の柔軟性が低下してしまいます。
常に肩に力が入っている人や、普段から猫背姿勢をとっている人は注意が必要です。
肩甲骨を正しい位置に戻すためには、頭を支える首のインナーの筋肉や、肩甲骨の土台である胸郭の柔軟性が大切です。
また、胸郭と骨盤をつなぐ腹筋が大切な役割を果たします。
姿勢が悪いと心当たりがある方は、肩甲骨、胸郭の柔軟性を高めることや、腹筋群のトレーニングを意識的に行ってみて下さい。
◆参考文献
LOcO⊂uRE voL4 nO.1 2018
臨床画像 Vol.33,No.3,2017