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No.5 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の特徴

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肩関節周囲炎は40歳から60 歳代によく発生して、この好発年齢から、いわゆる「五十肩」として、一般的に知られている病気です。

 

 

肩関節の構成体のなかには、明らかな原因がないのに痛みと動かしづらさをきたす状態の総称と言われています。

 

 

明らかな原因がないという言葉を紐解くと、構造的には、まだ大丈夫な状態ということになります。

 

 

ただし、肩関節周囲炎というぐらいなので、肩の何らかの組織に負担がかかって痛みが起こっています。

 

 

そして、時期によって急性期、慢性期、回復期の 3 つの病期に分類されます。

 

 

急性期では、炎症による痛みを認めます。動かした時の痛みに始まり、 安静時や夜間時に痛みが出現します。痛みのために肩関節の硬さが進行していきます。

 

 

慢性期(frozen phase =凍った時期)では、肩関節の硬さが症状が主体となります。徐々に安静時や夜間時の痛みは軽減しますが、可動域制限が残存し、可動域制限を超えて動かそうとすると痛みが生じます。

 

 

回復期(thawing phase =解凍時期)では、症状が回復する時期と言われ、徐々に可動域の制限は回復し、それにともない動かした時の痛みもなくなっていきます。

 

 

このような形で、痛みが強い時期があり、痛みがあることで動かしづらさが生じて、硬さが出てきます。

 

 

この炎症がある時期をどれだけ早く終わらせられるかが、動きの制限なるべく残らずに治すための鍵になります。

 

 

五十肩をほっていたら痛みが良くなった、と聞いたことありませんか?これも、一理はあると思います。

 

 

ただしこの病気で怖いのは、肩の筋肉である腱板(いわゆるインナー)が傷んでくると、酷くなった場合、手術に移行するリスクがあります。

 

 

この腱板が切れた状態を腱板断裂と呼びますが、年齢とともに徐々に増え、50歳代で10人に1人、60歳代で7人に1人、70歳代で 4人に1人、80歳代で3人に1人程度とされています。

 

 

若い人では多くはありませんが、転倒や転落などで、直接肩をぶつけることによる外傷で断裂が生じることもあります。

 

 

また、肩に痛みが出た原因がある場合は、安静にして一時的に症状が緩和しても、また痛みが出てくる可能性が高い状態となります。

 

 

なぜ、肩の関節は負担がかかりやすいかを考えていきましょう。

 

肩の関節は、主に肩甲上腕関節と呼ばれ、上腕骨と肩甲骨にある受け皿(関節窩:くぼみ)で出来ています。

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(出典:http://shoulder-doctor.net/story/story_kouzo.html)

特に、骨のはまりが浅い関節であるのが特徴で、骨のズレによる問題が生じやすい関節です。

 

 

そのため、肩甲骨(受け皿)の動きが悪くなったり、肩のインナーの筋肉が働きにくくなると、骨のズレが生じやすくなり、肩にある組織に負担がかかってきます。

 

 

肩に負担がかかっているケースで、よくみられやすいのは、肩甲骨が外側に寄り、下に傾いている、いわゆる猫背の状態です。

 

 

背骨と肩甲骨までの距離が広くなっている人や、肩甲骨の下側が内に寄っている人は注意が必要です。

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(出典:https://skblog369.com/yurutaisou-scapula-merit/)

もう少し詳しく考えますと、肩甲骨は、肋骨(胸郭)の上にある骨になりますので、猫背姿勢にともなって、肋骨の動きが悪くなっている場合があります。

 

 

そのため、肩甲骨の動きを良くするためには、その土台にある肋骨(いわゆる胸郭)を柔らかくすることが必要となります。

 

 

結局、肩の関節に負担がかかっているのは、結果であって原因ではない可能性があります。

 

 

普段の生活習慣や不良な姿勢などから、繰り返し負担をかけた結果、起こってきています。

 

 

猫背姿勢がある方や、上肢をよく使う習慣がある方は、注意していき、痛みが繰り返す際は、そのままにしないようにしていきましょう。

 

 

◆参考文献

整形外科看護 2018 vol.23 no.11(1051)

整形外科看護 2019 vol.24 no.4(327)