リハトップ

身体に関わる専門的な情報を、一般の方々にもわかりやすく伝えていくためのブログです。

No.8 腰痛を理解するための背骨と骨盤の関係

f:id:rihatop:20200518142701p:image

腰痛とは、病気の名前ではなく、腰部を主とした痛みやはりなどの不快感といった症状の総称です。

 


一般的には、座骨神経痛を代表とする下肢の痛みやしびれを伴う場合も含むとされています。

 

 

このうち腰痛の原因が特定できるものが15%で、原因が特定できない腰痛は85%と言われています。

 


原因が特定できるものを紐解くと、いわゆる椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、MRIやレントゲンの所見と症状が一致するものを指します。

 

 

逆に、原因が特定できない腰痛と言うのは、MRIやレントゲンの所見と一致しない腰痛や、構造物には問題がないケースと言えます。

 

 

病気がある腰痛は、整形外科で病状を判断の上、手術が必要か、保存的治療で持たせていくことが可能であるかを判断した後、必要度に応じてリハビリなども含めて治療をしていくことになります。

 

 

原因の判断がつきにくい腰痛に関してが厄介なもので、皆さんは整骨院へ通ったり、マッサージを受けに行ったりしながら持たせている方が多いのではないでしょうか。

 


ここでの腰痛との向き合い方で、その後の身体に影響を及ぼす度合いが変わってくると考えています。

 


整理したいこととして、腰痛があって原因がない(MRIやレントゲンは問題ない)と言うことは、腰痛の原因は、背骨の神経や椎間板などからくる痛みや痺れではないため、それらは除外して考える必要があるということです。

 


それらを除くと、残ってくるのが、筋肉、関節、脳みそが関与している可能性が高くなります。

 


日常生活に大きく支障をきたさない腰痛に関しては、筋肉、関節に負担がかかり生じていることがほとんどです。

 


しかし、慢性的な痛みがあり、日常生活にも支障をきたしている腰痛の場合は、問題が複雑に絡みあっており、身体を良くするだけでは、治りにくいものもあります。

 

ここでは、身体の問題について理解を深めていきたいと思います。

 

まずは、腰骨の構造についてですが、腰骨は腰椎と呼び、腰椎は、5つの骨からできています。また、人の腰椎は、元々少し反り返った形となっています。

f:id:rihatop:20200518153643j:image

腰骨の後ろには関節があり、それを椎間関節といいいます。


この関節に負担がかかる時というのは、腰を曲げた時は離開(開く)反り返えらせた時は圧迫、捻った時は回旋(捻れ)の負担がかかります。

 

 

腰骨の特徴としては、捻る動きが苦手という点で、約5°程度と言われています。

 


そのため、腰骨と隣接する股関節や胸椎が硬くなると腰に捻る負担がかかりやすくなります。

 

 

次に背骨について説明していきます。


背骨は上から、頚椎、胸椎、腰椎となっており、腰椎は前弯、胸椎後弯、頚椎は前弯S字カーブを描います。

f:id:rihatop:20200518154142j:image

腰骨は、他の背骨からの影響を受けやすく、例えば、猫背姿勢の場合は、背中が丸くなるとともに腰も丸くなります。逆に腰骨が丸くなれば、胸椎も丸くなる関係性があります。

 

 

そうすると腰には曲がる負担がかかるとともに、腰が曲がらないように支えようと腰の筋肉が働きます。

 


次に、少しややこしくなりますが、よく経験するパターンとして、腰の反り返りが強く、背中は丸くなっているケースです。 

f:id:rihatop:20200518154741j:image

出典:

(https://news.yahoo.co.jp/articles/8966d0badfb85087c95cf6e1c594ea96570d71a3?page=2)

これは、腰の反り返りが強くなると、上半身の重心が後ろにズレるため、バランスをとるように、背中を丸くして重心を前に移そうと姿勢を支えてしまう結果生じてしまいます。

 

 

そのため、腰には反り返る負担がかかります。また逆に背中が丸くなると腰には反り返る負担が大きくなるとも解釈でき、背中(胸椎)の硬さは腰に反り返る負担を大きくしてしまいます。

 

 

ここでは、背骨がくなると腰も丸くなり、腰には曲がる負担がかかるということと、反り腰、猫背パターンが多く、この場合は、腰に反り返る負担がかかること理解していて欲しいと思います。

 

 

次に、腰骨と骨盤の関係性についてですが、まず、骨盤は前に傾くことを前傾、後ろに傾くことを後傾と言い、この骨盤は腰骨と連動して動く構造になっています。

 

 

例えば、骨盤が前に倒れると腰は反り返り後ろに倒れると腰は丸くなります。

f:id:rihatop:20200518160904p:image

(出典:https://love-spo.com/sports-lab/sports_selfconditioning021.html)

 

骨盤が前に傾くと、腰に反り返る負担がかかり、後ろに傾くと腰に曲がる負担がかかるということになります。

 

 

ここまでの内容をまとめると、反り腰姿勢の人は、骨盤が前に傾き、反り腰と猫背になる。逆に骨盤が後ろに傾く人は、丸い腰と猫背になる。ということです。

 

 

例えば、このような姿勢がある人がマッサージなどで身体を持たせていると、いずれは身体に限界がきてしまいます。

 

 

マッサージが悪いわけではなく、マッサージだけでは原因治療にならない可能性が高いということです。

 

 

今回は、背骨と骨盤の関係性について説明していきましたが思いあたる人も多いのではないでしょうか?

 

 

根本的な問題解決を第一優先に考え、腰痛を長引かせないようにしていきましょう。

No.7 頚椎症と首の神経、姿勢からの影響

f:id:rihatop:20200516014252j:image

頚椎症とは、首の骨の変形などによって、首の神経根や脊髄が圧迫されて、首や肩、腕の痛みや痺れが生じてくる病気です。

 


はじめに、首の神経根や脊髄について説明していきたいと思います。

 


まず、脊髄からですが、背骨の中の空間は、脊柱管と呼ばれており、この部分にある神経を脊髄と言います。

 


また、首の脊髄からは肩や手に向かう神経が枝分かれしており、それを神経根と言います。

f:id:rihatop:20200516004036j:image

(出典:https://medicalnote.jp/contents/180925-005-QV)

この神経根の圧迫を受ける頚椎性神経根症、脊髄が圧迫を受けると頚椎性脊髄症と言います。

 

 

これらは、酷くなると、指先が動かしにくくなったり、感覚が鈍くなったり、場合によっては歩くこともできにくくなってくることもあります。

 

 

次に、神経が圧迫を受ける原因について、首の構造から考えていきたいと思います。

 


まず、首の骨は頚椎と呼び、7つの骨が重なってできています。骨の間には椎間板というクッション材のようなものが間に挟まれています。

f:id:rihatop:20200516005944j:image

(出典:https://www.shibire2.com/用語辞典/か/頚椎-けいつい/)

この椎間板は年齢とともに水分が失われて弾力性がなくなり変性するとされています。

 

 

それによって首の骨も少しずつ歪んできてしまい、その結果、首の脊髄や神経根も圧迫をしてしまうと症状がでてきてしまいます。

 

 

骨は積み木と同じで、間にある椎間板が変性して、積み木が傾くと、骨も傾くような構造となります。

 

 

また、首は姿勢の影響をとても受けやすい部位となります。例えば、猫背姿勢になると、頭が前に出て、首が曲がります。

 


首の構造の特徴として、この首が前に出た状態では、首の下側と上側の骨の動きが異なります。

 


下は曲がりますが、上は反り返りが強くなる関係性があります。

 

 

構造物への負担としては、首の骨が曲がると、骨の前側が狭まり、前側の椎間板が圧迫を受けます。また、骨の後ろにある神経の通り道はひらきます。

 


首を反らす時は、逆に骨の後ろ側が圧迫されて、神経の通り道を狭くしてしまいます。

 


その為、加齢とともに、猫背姿勢になったり、日常生活で悪い姿勢を長くとっていると、椎間板への負担が、変性を助長する恐れがあります。

 

 

また、椎間板は、前側が圧迫を受けると、椎間板の髄核という組織が後ろに移動してきます。これが酷くなったものがヘルニアです。

f:id:rihatop:20200516011038j:image

(出典:https://medicalnote.jp/contents/150502-000003-LUILVM)

猫背姿勢の問題は、スマホの長時間の利用や、パソコン作業など、姿勢を悪くしてしまう生活習慣は様々あります。

 

 

それに対して、普段から実践したいポイントが2つあります。

 

 

それは、座っている時に、骨盤を立てることと、二重顎をつくることです。

 

 

背筋を伸ばすことは、比較的意識する方も多いと思いますが、骨盤が後ろに倒れると猫背になりますし、顎が上がってしまうと首に負担がかかります。

 

 

骨盤を立てることと、頭の位置を良いところに保つ癖をつけることはとても大切です。

 


筋肉で言えば、腰骨と骨盤、大腿骨をつなぐ腸腰筋や首の深部頚屈筋と呼ばれる、いわゆる首のインナーマッスルが大切になってきます。

 


それは、骨盤を立てることと、顎を引くことで効果的に働き、首の負担を減らしてくれます。

 


また顎を引くことで腹筋が働きやすくなり、腰への負担も軽減してくれます。

 

 

運動をする際にも忘れがちな部分になりますので、トレーニングの際にも気をつけていくと良いポイントになります。

 

 

何気なくしている姿勢や動きが筋肉だけでなく、首実質のダメージを蓄積させていっていることを普段から意識して、首の障害に気をつけていきましょう。

 

No.6 肩峰下インピンジメント症候群の原因と要因

f:id:rihatop:20200514233148j:image

肩峰下インピンジメント症候群とは、手を挙げたり、動かしたりした時に、肩にある組織が、衝突したり、挟まることで痛みが引き起こされる病態のことを言います。

 


その名前の通り、肩の肩峰という骨のところで衝突する(impingement)負担がかかり、痛みを引き起こすものとなります。

f:id:rihatop:20200514224208g:image

(出典:http://dev.89team.jp/okada/kega/impingement.html)

主に肩関節は、上腕骨と肩甲骨で成り立っており、上腕骨には、大結節という突起がありますが、手を挙げていく時に、そこが肩峰の下(烏口肩峰アーチ)を通る際に、腱板(インナー)や滑液包(関節の動きを滑らかにする袋)に衝突して炎症が起こってしまいます。

 

 

ここに繰り返し負担をかけて、悪化すると、肩の筋力低下や、安静時、夜間時に痛みが生じてくることがあります。

 

 

肩峰の骨の形として、人それぞれ個人差があり、肩峰が下に突出している場合や、加齢によって、肩峰の下に骨棘ができている場合など、肩峰実質が構造的に悪くなっていることもあります。

 

 

また進行して、腱板の筋肉が傷み、腱板の筋肉の働きが弱くなると、さらに悪化させる恐れがあります。

f:id:rihatop:20200514223326p:image

(出典:https://www.orthop-kagoshima-u.com/consultation/expertgroups/shoulder/)

腱板の筋肉が働きにくくなると、元々、腱板の筋肉は、上腕骨を肩甲骨の受け皿に引きつける重要な役割がありますが、それができなくなってしまいます。

 

 

この腱板が切れた状態を腱板断裂と言い、腱板断裂は、外傷よりも加齢にともなう、退行性腱板断裂の方が圧倒的に多く、60歳以上の人口では10数%に及ぶと言われています。

 

 

このように、肩関節のインピンジメントは、なるべく避けたい問題となりますが、その要因について考えていきましょう。

 

 

まず、腱板の筋肉や滑液包の位置を見ていきましょう。

f:id:rihatop:20200514231303j:image

(出典:https://toutsu.jp/pain/kata.html)

インピンジメントでは、この腱板や滑液包に接触する負担が大きくなると言うことは、単純に考えると骨と骨が近づくと負担がかかるということになります。

 

 

例えば、肩甲骨を引きつける筋肉が働きにくくなり、肩甲骨が前傾(前に傾く)することで、肩峰が骨頭側に近づきます。すなわち天井が下に下がってきたような状態で手を挙げると負担がかかりやすくなります。

 

 

また、インナーの筋肉の働きが弱くなると、アウターの筋肉が過剰に収縮して、骨頭を上に持ち上げてしまいます。そうすると、天井側に近づいてしまいます。

 

 

このような形で、肩甲骨の位置が悪くなったり、インナーの筋肉が働きにくくなると生じてきてしまいます。

 

 

次は、柔軟性の観点から考えてみましょう。

 

上腕骨がズレる関係性として、硬い部分が伸ばされる方向に手を動かすと、硬い方と逆の方向に骨が移動してしまいます。

 

 

例えば、手を挙げるときに肩の下の組織が硬いと骨頭は上に移動します。

 

 

また、肩が悪い人で硬さがみられやすい部分として、肩の後ろの下側があります。

 


先ほどの関係性から考えると、この組織が伸ばされるところに手を動かすと、前かつ上に上腕骨が移動してしまいます。

 


このようにして、肩まわりの硬さがあるだけでも上腕骨が移動して、インピンジメントが起こりやすくなります。

 


肩のインピンジメントを防ぐためには、肩まわりの柔軟性や、肩甲骨を引きつける筋肉、骨頭を引きつけるインナーの筋肉の働きは、肩関節にとって重要な役割を担います。

 


肩まわりのトレーニングをするポイントにしてみてはいかがでしょうか。

No.5 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の特徴

f:id:rihatop:20200514200301p:image

肩関節周囲炎は40歳から60 歳代によく発生して、この好発年齢から、いわゆる「五十肩」として、一般的に知られている病気です。

 

 

肩関節の構成体のなかには、明らかな原因がないのに痛みと動かしづらさをきたす状態の総称と言われています。

 

 

明らかな原因がないという言葉を紐解くと、構造的には、まだ大丈夫な状態ということになります。

 

 

ただし、肩関節周囲炎というぐらいなので、肩の何らかの組織に負担がかかって痛みが起こっています。

 

 

そして、時期によって急性期、慢性期、回復期の 3 つの病期に分類されます。

 

 

急性期では、炎症による痛みを認めます。動かした時の痛みに始まり、 安静時や夜間時に痛みが出現します。痛みのために肩関節の硬さが進行していきます。

 

 

慢性期(frozen phase =凍った時期)では、肩関節の硬さが症状が主体となります。徐々に安静時や夜間時の痛みは軽減しますが、可動域制限が残存し、可動域制限を超えて動かそうとすると痛みが生じます。

 

 

回復期(thawing phase =解凍時期)では、症状が回復する時期と言われ、徐々に可動域の制限は回復し、それにともない動かした時の痛みもなくなっていきます。

 

 

このような形で、痛みが強い時期があり、痛みがあることで動かしづらさが生じて、硬さが出てきます。

 

 

この炎症がある時期をどれだけ早く終わらせられるかが、動きの制限なるべく残らずに治すための鍵になります。

 

 

五十肩をほっていたら痛みが良くなった、と聞いたことありませんか?これも、一理はあると思います。

 

 

ただしこの病気で怖いのは、肩の筋肉である腱板(いわゆるインナー)が傷んでくると、酷くなった場合、手術に移行するリスクがあります。

 

 

この腱板が切れた状態を腱板断裂と呼びますが、年齢とともに徐々に増え、50歳代で10人に1人、60歳代で7人に1人、70歳代で 4人に1人、80歳代で3人に1人程度とされています。

 

 

若い人では多くはありませんが、転倒や転落などで、直接肩をぶつけることによる外傷で断裂が生じることもあります。

 

 

また、肩に痛みが出た原因がある場合は、安静にして一時的に症状が緩和しても、また痛みが出てくる可能性が高い状態となります。

 

 

なぜ、肩の関節は負担がかかりやすいかを考えていきましょう。

 

肩の関節は、主に肩甲上腕関節と呼ばれ、上腕骨と肩甲骨にある受け皿(関節窩:くぼみ)で出来ています。

f:id:rihatop:20200514193810j:image

(出典:http://shoulder-doctor.net/story/story_kouzo.html)

特に、骨のはまりが浅い関節であるのが特徴で、骨のズレによる問題が生じやすい関節です。

 

 

そのため、肩甲骨(受け皿)の動きが悪くなったり、肩のインナーの筋肉が働きにくくなると、骨のズレが生じやすくなり、肩にある組織に負担がかかってきます。

 

 

肩に負担がかかっているケースで、よくみられやすいのは、肩甲骨が外側に寄り、下に傾いている、いわゆる猫背の状態です。

 

 

背骨と肩甲骨までの距離が広くなっている人や、肩甲骨の下側が内に寄っている人は注意が必要です。

f:id:rihatop:20200514194104j:image

(出典:https://skblog369.com/yurutaisou-scapula-merit/)

もう少し詳しく考えますと、肩甲骨は、肋骨(胸郭)の上にある骨になりますので、猫背姿勢にともなって、肋骨の動きが悪くなっている場合があります。

 

 

そのため、肩甲骨の動きを良くするためには、その土台にある肋骨(いわゆる胸郭)を柔らかくすることが必要となります。

 

 

結局、肩の関節に負担がかかっているのは、結果であって原因ではない可能性があります。

 

 

普段の生活習慣や不良な姿勢などから、繰り返し負担をかけた結果、起こってきています。

 

 

猫背姿勢がある方や、上肢をよく使う習慣がある方は、注意していき、痛みが繰り返す際は、そのままにしないようにしていきましょう。

 

 

◆参考文献

整形外科看護 2018 vol.23 no.11(1051)

整形外科看護 2019 vol.24 no.4(327)

No.4 胸郭出口症候群の症状と姿勢

f:id:rihatop:20200511221643j:image

胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS) とは、胸郭(肋骨の筒)の出口である鎖骨周囲で、神経、動脈、静脈の圧迫を受けることによって起こる症状の総称のことを言います。

 

 

これは、1956年にPeetが提唱したもので、けっこう古くから知られているものとなります。

 


実際のところ、血管が圧迫されて起こる頻度は少なく、95%が腕神経叢と呼ばれる神経が原因と言われています。

 

 

症状は、上肢にしびれや痛みが生じます。人の首の神経の問題は、腕に生じることが身体の特徴です。

 

 

元々人間は、魚類からの派生と言われており、魚のヒレの部分が上肢になっていったとされます。

 

 

その為、首と腕はつながっているような構造にあり、首の神経は腕の神経を支配するため、首の神経の問題は、腕に生じることになります。

 


腕神経叢といわれる神経は、脊髄から出て、首から起こる神経の内、第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経からなります。

 

 

頚椎は7つありますので、首の下側からででいる神経のことなります。

 

 

その問題となる部位は3つあります。

①前斜角筋と中斜角筋の間(筋肉の間)

②鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙(骨と骨の間)

③小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方(筋肉の下)

f:id:rihatop:20200511222519j:image

(臨床画像 Vol.33, No.3, 2017より引用)

 

それぞれの部位で絞めつけられたり、圧迫されたりすることで生じる症状となりますが、神経がそのような状態になることを、神経の絞扼と言います。

 


この神経の絞扼が受ける部位によって、症状の名前が変わり、①斜角筋症候群、②肋鎖症候群、③小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれます。

 


次に神経の絞扼によって、症状が出やすい場所の内訳について下記に示します。


胸郭出口症候群150例の臨床症状 症例数(%)

頭痛30(20%)

背部痛51(34%)

肩痛135 (90%)

上肢痛57(38%)

しびれ感126 (84%)

上肢40(27%)

手指 98(65%)

手指腫脹9(6%)

 

この結果からも分かるように、肩痛としびれが最も多い症状ですね。

 

 

さらに、神経の絞扼の仕方には、圧迫型と牽引型というものがあります。

 

 

圧迫型は男性に多く、平均年齢は35歳、牽引型はほとんど女性であり、平均年齢は26歳と若い方が発症しています。

 

 

また混合型が全体の7割を占めるとされ、腕神経叢の牽引による症状が主症状の人が多いとされています。

 

 

これらは、姿勢不良によって、後頭部から肩あるいは、背部に痛みを訴える人が多いと言われています。

 

 

例えば、いかり肩では、斜角筋の隙間が狭くなるし、なで肩では、肋骨と鎖骨の間が狭くなります。

 

 

またその状態を続けていると、肩甲骨が下方回旋位(下に傾く)になり、小胸筋の柔軟性が低下してしまいます。

f:id:rihatop:20200511223233j:image

常に肩に力が入っている人や、普段から猫背姿勢をとっている人は注意が必要です。

 

 

肩甲骨を正しい位置に戻すためには、頭を支える首のインナーの筋肉や、肩甲骨の土台である胸郭の柔軟性が大切です。

 

また、胸郭と骨盤をつなぐ腹筋が大切な役割を果たします。

 

 

姿勢が悪いと心当たりがある方は、肩甲骨、胸郭の柔軟性を高めることや、腹筋群のトレーニングを意識的に行ってみて下さい。

 

 

◆参考文献

LOcO⊂uRE voL4 nO.1 2018

臨床画像 Vol.33,No.3,2017

No.3 肩こりと自律神経の関係

f:id:rihatop:20200511201324j:image

自律神経とは、自動的に身体の機能をコントロールする役割を果たす神経を言います。例えば、呼吸したり、血液を身体に送ったり、体温を調整するために汗をかいたりする神経です。

 

 

自律神経は、交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経は、活発に活動している時や、緊張している時に働き、副交感神経はリラックスしている時に働く神経です。

 


生活の中で、この神経がバランスをとりながら、人は身体を上手に保っています。

f:id:rihatop:20200511201435j:image
(わかりやすい病気の話シリーズ19 自律神経失調症 一般社団法人日本臨床内科医会より引用)

 


ただし、この自律神経が乱れてくると肩こりにつながってくることがあります。

 


少し難しい内容になるかも知れませんが、私なりの考え方も交えながら説明していきたいと思います。

 


痛みと自律神経の関係について

まず急性的な痛みには、生理的な反応として、交感神経の活動が優位になるとされています。

 


しかし、慢性痛の動物モデルにおいては、心拍変動や血圧の反射は減弱を認めるとの報告があります。

 


慢性的に痛みがある人は、交感神経が優位になるような、いわゆる炎症による痛みと、考え方とは違ってきます。

 

 

肩こりと自律神経に関わる報告を見てみましょう。


肩こり有訴者と健常者に20分間のVDT作業を行わた結果、頭部の前方変位は肩こりの有無にかかわらず認められたが、肩こり有訴者でのみ上位頚椎の過伸展と肩こり感が増悪し、その変化は作業終了後もしばらく持続した。(城ら,2016)

 

VDT作業中に心拍数やLF/HF比の増大を示したのに対し、肩こり有訴者では明らかな変化を認めなかった。

 


肩こりが慢性的にある人は、筋や関節の問題だけでなく、自律神経の活動がうまくいっていない可能性が考えられます。

 


この研究では、運動時も自律神経の応答が低下し、運動により即時的に痛覚感受性を低下させるexercise-induced hypoalgesia(EIH)も生じないとされています。

 


さらに睡眠時も、健常者と比較すると、肩こり有訴者では副交感神経活動の減弱と交感神経活動の充進を示したとされています。

 


肩こりのある人は、運動により痛みが即時的に緩和することもしにくく、寝ているときもゆっくり体を休めれていない可能性があります。

 


このように自律神経の乱れによって生じている問題によって肩こりにつながっている場合は、肩こりに対してだけでなく、自律神経の乱れを起こしている原因に対して改善していくことを考えていかないといけないのではないでしょうか。

 


自律神経を働くべく時に働き、休む時には休むような習慣をつけていき、自律神経を整えていくことになってくると思います。

 


広い視野で考えると育ってきた環境などにもよって、ストレスを感じやすい性格や、ストレスを溜めやすい性格、ストレスへの耐久性が低い人もいるかもしれません。

 

 

単に自律神経を整える習慣にはコレ!とは言いにくく、同じことをしても、人それぞれ好きな事、嫌いな事があるように感じとり方も様々です。

 


私は、この様々あることが、大切と思っていまして、自分が幸せになる好きな習慣を選ぶことが大切なことだと思っています。

 


例えば、温泉が好きな人は温泉に入ると、副交感神経が、ぐんぐん働くでしょうし、運動でも野球が好きな人は、野球をすることがストレスを爆発的に発散できるかもしれません。

 


「自律神経調整方法」など、一般的な方法はネットで検索すると、多数紹介されていますのが、それらは参考にするとともに、方法論に捉われない視点を持ちながら見ていく必要があると思っています。

 


自分自身が幸せになることを前提に実践していくことが、一般的にはストレスと言われることも、その人にとっては、全然ストレスとして感じていないものもあると思います。

 


そもそも、人間の感情的な部分は、脳みその中でも古い脳に属する所からできているため、考える前に、危険だとか嫌だとか好きだとかを判断しています。

 


そこから、〇〇だからこれは嫌!とか〇〇だからこれは好き!とかを考えていまして、考える前に感じろという言葉があるように、学術的ではありませんが、やはり自分自身が幸せと思うことに触れる回数を増やすことが、自律神経を整えていくために必要なことではないでしょうか。

 


一度、理由などを考えず、シンプルに好きなことはなんだろう?嫌いなことはなんだろう?と考えてみると答えは出てくるかも知れません。

 

 

◆参考文献

MB Orthop,29(9):1-7,2016

No.2 肩こりに影響する要因とマッサージの効果について

f:id:rihatop:20200511192540j:image

肩こりには、どのようなものが影響をして、マッサージの効果はどれくらいあるのでしょうか。

 

 

一部ですが、報告から見ていきましょう。

 

作業環境が肩こりに及ぼす影響について、女性看護師174名対しアンケート調査を行った結果、仕事の身体的負担が関連し、他の報告でも仕事のストレスが関連していると報告があるが、本研究も同一の結果であった。

 


第1主成分(仕事での身体的負担と心理的負担)には該当しなかったが「肩こり罹病期間」や「日常生活でのVDT機器やスマートフォンの1日平均使用時間」も第1主成分との関連は高い結果であり、VDTの使用時間が肩こりに影響する可能性も示唆された(半谷ら,2019)

 

 

仕事内容や、仕事でのストレスも肩こりへの影響が考えられ、姿勢などの身体的特徴以外にも、仕事を取り巻く環境が関与する可能性がありそうです。

 


また、スマートフォンの使用は第1主成分と関連が高いとされており、長時間の使用は、肩こりに影響をすることが考えられます。

 

 

スマートフォンの1日あたり平均の利用時間は、全体で「2時間以上3時間未満」が24.1%で最多で、次いで「3時間以上4時間未満」が18.5%とされています。(MMD研究所×スマートアンサー)

 

 

よって4割以上の人が1日2時間以上使用していることになります。

 


報告からもあるように、スマートフォンの使用時間は、日常的に気をつけていく必要がありそうですね。

 

 

特に最近では、スマホ首(いわゆるストレートネック)という言葉が使われるようになってきました。

 


元々ヒトは、四つ足移動から二足歩行へと進化しましたが、二足歩行になることで、手に体重をかけて活動する機会が減り、肩まわりだけでなく、首・腰の筋までが弱くなってきたと言われています。

 


さらに大人では、首から肩にかけての筋によって、約5kgの頭と、約8kgの両腕を支えなくてはいけない構造となっています。

 


人間の進化?退化?、文明の変化によって、人間の新たな習慣を作り、新たな病気を作ってるとも言えるでしょう。

 


次にマッサージの効果についてですが、最近では、安価で受けられるマッサージ店などを街中で見かけることが増えてきました。それでは、マッサージの効果について考えていきたいと思います。

 


マッサージ時間とマッサージ効果の持続時間の研究より、自覚的な肩こり度はマッサージを20分施行、80分施行、非実施群の3群を比較して、マッサージ施行両群とも7日後まで非実施群と有意差を認めた。(肥田ら,2019)

 


筋硬度(筋の硬さ)は、80分群が20分群と有意差を認めた時期はマッサージ2日後までであった。

 


また自覚的肩こり度の変化率と筋硬度の変化率には有意な相関がある

 


マッサージを行う方が、ご自身で自覚している肩こり度には効果があるようですが、その持続期間はやはり短期間だとされています。

 

 

またこの研究では、筋の硬さは自覚的な肩こりと関与するとされていますが、筋の硬さは、長くマッサージを行っても2日までしか差がないとされており、長い時間マッサージを受けても、2日経てば肩こり感は、生じてくる可能性が考えられます。

 


やはり肩こりにつながる原因が変わってないからでしょうか?もしくは、マッサージの技術の問題でしょうか?

 


この研究では、民間業で3年以上短時間労働者として働き、利用者から指名されるほどの技術者を対象にしています。

 


技術は、完全に統一することはできませんが、ある一定のレベルがある施術がされています。

 


やはり短期間で肩こりは戻ってきてしまう影響は、肩こりの原因が変わってないことが要因なのではないでしょうか?

 


まとめとしては、仕事内容や仕事で強くストレスを感じている場合は、肩こりにつながる可能性があり、スマートフォンの長時間の使用は、さらに助長してしまう影響があるかもしれません。

 


肩こりに対するマッサージの効果ですが、一定の効果はあるようですが、短期的に戻ってしまう可能性が高いことが考えられます。

 

 

◆参考文献

日本作業療法学会抄録集 53: 280-280, 2019 

日本運動器疼痛学会誌 2019;11:122–128